2026年8月20日
社宅規程とは、だれが社宅に入居できるか、家賃をいくら負担するか、退去のときにどうするかといった、社宅のルールをまとめたものです。
作成が法律で義務づけられているわけではありませんが、就業規則の一部として整えておくのが一般的とされています。
なかでも従業員から受け取る家賃(使用料)は、国が定めた基準額の半分以上を受け取っていないと、給与とみなされて税金がかかる場合があるため、決め方に注意が必要です。
この記事では、社宅規程に盛り込むべき項目や、借上げ社宅と社有社宅の違い、従業員の税負担を増やさない家賃の決め方まで、わかりやすく解説します。
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<このコラムを読んだら分かる事>
社宅規程とは、社宅の入居資格や使用料、入退去のルールなどを定めた決まりごとで、社宅管理規程や社宅規定と呼ばれることもあります。
作成そのものを法律で義務づけられているわけではないものの、労働基準法第89条では、常時10人以上の従業員を使用する事業場に就業規則を作成して労働基準監督署へ届け出るよう定めています。
社宅の使用料や費用負担のように従業員の待遇に関わる定めは、この就業規則に記載すべき事項に含まれることも少なくありません。
そのため、社宅制度を設ける際は、就業規則の付随規定として社宅規程を整えておくのが一般的です。
〈出典〉 e-Gov法令検索:労働基準法「第九章 就業規則 第八十九条」
社宅規程を整える目的は、大きく以下の3つに分けられます。
それぞれ順に見ていきましょう。
社宅規程が必要な一番の理由は、従業員が公平に社宅を利用できる状態をつくれることにあります。
入居資格や家賃の負担基準があいまいだと、「なぜあの人は入居できて自分はできないのか」といった不満が生まれかねません。
だれを対象とし、どのような条件で利用できるのかをあらかじめ明文化しておけば、従業員も納得したうえで制度を使えます。
費用や手続きのルールを定めておくと、入居や退去時の負担をめぐるトラブルを未然に防げます。
とくに敷金や原状回復、水道光熱費などは、負担者があいまいなままだと、退去のタイミングでもめる原因になりかねません。
禁止事項やルールを破ったときの対応まで書いておけば、担当者も迷わず対応できます。
従業員から受け取る家賃(使用料)の決め方を規程で定めておくと、思わぬ税負担を避けやすくなります。
この使用料が国の定めた基準額の半分を下回ると、従業員の給与とみなされ、給与課税(給与として所得税が課されること)の対象になる場合があるためです。
規程であらかじめ考え方をそろえておけば、担当者ごとに金額の判断がばらつくこともありません。
具体的な基準や計算の考え方は、次の章で解説します。
社宅規程に盛り込む項目は会社が任意で決められますが、最低限そろえておきたいのは以下の6つです。
それぞれのポイントを詳しく解説します。
はじめに決めておきたいのが、だれが社宅に入居できるかという入居資格です。
「独身者に限る」「自宅からの通勤が難しい従業員を対象とする」といった条件や、同居できる家族の範囲も明確にしておきます。
希望者が多い場合の選び方(勤続年数や抽選など)まで示しておくと、従業員が不公平に感じにくくなります。
従業員から受け取る家賃(使用料)と、会社が負担する割合を決めておきましょう。
給与から天引きする場合はその旨や、月の途中で入居したときの日割り計算のルールも書き添えておくと運用がスムーズです。
この使用料をいくらに設定するかは、次に説明する税金の基準と深く関わるため、注意してください。
使用料を決めるうえで欠かせないのが、賃貸料相当額です。
賃貸料相当額とは、実際の家賃相場ではなく、国税庁の算式によって算出する、社宅の従業員負担額の基準となる金額です。
従業員から受け取る家賃がこの賃貸料相当額の50%以上であれば、会社が負担する分は給与として課税されません。
しかし、無償で貸したり50%未満しか受け取っていなかったりすると、その差額が給与とみなされて税金がかかります。
ここで気をつけたいのが、「家賃の2割」のように実際の家賃を基準にして使用料を決めているケースです。
実際の家賃と賃貸料相当額は別の金額のため、家賃を基準に決めた使用料が、賃貸料相当額の半分を下回ってしまうことがあります。
従業員に貸す社宅の賃貸料相当額は、以下の3つを合計して求めます。
この計算方法は、会社が所有する社宅でも、借上げた社宅でも同じです。
借上げの場合は、貸主に建物と敷地の固定資産税の課税標準額を確認します。
たとえば、賃貸料相当額が1万円の社宅の場合、従業員からいくら受け取るかで税金の扱いは以下のように変わります。
| 従業員から受け取る家賃 | 賃貸料相当額に対する割合 | 給与として課税される金額 |
|---|---|---|
| 0円(無償で貸与) | 0% | 1万円(全額) |
| 3,000円 | 30%(50%未満) | 7,000円(差額) |
| 6,000円 | 60%(50%以上) | 0円(課税されない) |
〈出典〉 国税庁ウェブサイト:No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき
※記載の内容は一般的な考え方です。実際の税務上の取り扱いは物件や契約の条件によって異なるため、具体的な判断は税理士や所轄の税務署にご確認ください。
なお、役員に社宅を貸す場合は、賃貸料相当額の考え方や計算方法が従業員とは異なります。
対象者に応じて基準を分けておくと、規程の運用で迷いにくくなります。
家賃のほかに発生する以下の費用についても、会社と従業員のどちらが負担するかを定めておきましょう。
負担区分を決めていないと退去時などにもめる原因になるため、費用ごとに漏れなく整理しておくことが重要です。
家具・家電付きの物件を借上げる場合は、以下の記事を参考にしてください。
〈関連コラム〉
借上げ社宅に家具は必要?家具付き借上げ社宅のメリット・デメリットと企業の導入ポイント
入居できる期間と、入退去の手続きも規程に定めておきましょう。
入居が決まってから実際に入居するまでの期限、居住できる期間、退去の申請方法や会社の立ち会いの有無などを、具体的に示しておくことが大切です。
手順をあらかじめ決めておけば、担当者が変わっても同じ対応を取れます。
契約時に必要な書類は、以下の記事で解説しています。
〈関連コラム〉
賃貸住宅を法人契約する際の必要書類一覧|提出のタイミングや注意点なども解説
退去となる条件と、退去時の原状回復のルールを明確にしておきましょう。
どのような場合に退去となるのか、原状回復はどこまでを従業員が負担するのかを定め、敷金を超える修繕費が出たときの扱いまで書いておくと安心です。
責任の範囲があいまいだと、退去のタイミングでトラブルになりやすいためです。
最後に、社宅で禁止する行為と、ルールを破ったときの対応を定めます。
代表的な禁止事項は以下のとおりです。
あわせて、違反した場合に退去を求めるといった対応まで書いておくことで、ルールを適正に運用できます。
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社宅規程は、借上げ社宅か社有社宅かによって、書き分けるべきポイントが変わります。
借上げ社宅は会社が賃貸物件を借りて従業員に貸す形、社有社宅は会社が所有する物件を貸す形で、それぞれ発生する費用や管理の範囲が異なるためです。
両者の違いは以下のとおりです。
| 項目 | 借上げ社宅 | 社有社宅 |
|---|---|---|
| 物件の形態 | 会社が賃貸物件を借りて従業員へ貸す | 会社が所有する物件を従業員へ貸す |
| 契約に関するルール | 貸主との契約内容や更新・解約の扱いを反映する | 自社の管理方針をそのまま定められる |
| 費用の負担区分 | 家賃・共益費・更新料など貸主に払う費用の扱いを明記 | 修繕費や固定資産税など保有にかかる費用は会社側 |
| 原状回復 | 貸主との契約に沿った範囲を従業員負担分と整理する | 会社の基準で範囲を定められる |
| 生活ルール | 物件やそのオーナーの規則に従う旨を加える | ゴミ出しや共用部など自社で細かく定められる |
借上げ社宅では、貸主との賃貸借契約の内容と食い違わないように書くことが大切です。
更新料や原状回復の範囲は貸主との契約で決まっているため、その内容を踏まえて従業員の負担分を整理します。
一方、社有社宅は会社が物件を所有しているため、生活ルールや費用負担を自社の基準で細かく定められる点が特徴です。
ただし修繕費や固定資産税などの保有コストは会社負担となるため、どこまでを会社が持つのかを明確にしておく必要があります。
社宅規程を作成すること自体は難しくありません。
また、作成した規程を社内で問題なく運用するには、正しい手順を踏み、決めた内容を関係者に行き渡らせておくことが大切です。
ここでは、社宅規程を作成・見直しするときに押さえておきたい流れとポイントを解説します。
社宅規程の作成は、以下の6ステップで進めます。
なお、4と5は社宅規程を就業規則の付随規程として定める場合に必要となる手続きです。
| 社宅規程を作成する基本的な流れ |
|---|
|
社宅規程は、一度作成して終わりではありません。
社内で共通のルールとして運用できるよう、必要な手続きを行い、従業員へ内容を周知することが大切です。
社宅規程を作成したり見直したりしたときは、就業規則や入居誓約書、社宅使用契約書などの関連書類と内容に食い違いがないかを確認しましょう。
規程だけを変更し、従業員に提出してもらう書類が以前の内容のままだと、記載内容が食い違い、運用時のトラブルにつながる可能性があります。
また、就業規則の付随規程として社宅規程を定めている場合は、就業規則との整合性を保つことも大切です。
社宅規程は、担当者が変わっても同じ基準で運用できる内容にしておくことが重要です。
使用料や入居資格、費用負担の考え方があいまいだと、担当者によって判断が変わり、従業員が不公平に感じる原因になることがあります。
規程を作成・見直しする際は、使用料や入居条件などに誤りがないかを確認し、必要に応じて複数人で内容をチェックしましょう。
あわせて、決定した内容は書面や社内イントラネットなどで従業員へ確実に周知し、だれでも同じルールで運用できる体制を整えることが大切です。
社宅規程を整えても、実際の運用では物件探しや契約、入退去の手配といった業務が続きます。
とくに異動や新卒採用が重なる時期は、短期間で多くの住居を用意する必要があり、総務・人事部門の負担が集中するケースが多いです。
こうした負担を軽くする方法のひとつが、物件手配などの業務を外部の専門会社に委託することです。
ただし、業務を「自社に残すもの」と「外部に任せられるもの」に分けて考えることが必要です。
たとえば、入居資格や使用料の基準をどう定めるか、規程をどう運用するかといった判断は、自社の方針に関わる中核の業務として社内に残します。
一方で、規程で定めた条件に沿った物件探しや契約、入退去の手続きといった手配業務は、外部に任せることが可能です。
社内では規程の設計や運用の判断に集中でき、繁忙期でも業務全体の停滞を防ぎやすくなります。
ただし、委託できる業務の範囲は、外部の会社によって違うのであらかじめ確認しておきましょう。
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ここでは、社宅規程について、よく寄せられる質問に回答します。
Q. 借上げ社宅でも社宅規程は必要ですか?
A. 法律上の作成義務はありませんが、作成しておくことをおすすめします。
借上げ社宅は会社が貸主から物件を借り、従業員へ貸与する仕組みです。
入居資格や使用料、費用負担などを規程で明確にしておくことで、担当者ごとの判断のばらつきを防ぎ、公平な運用につながります。
また、貸主との賃貸借契約の内容と整合性を取っておくことも大切です。
Q. 社宅規程に有効期限はありますか?
A. 社宅規程に決まった有効期限はなく、一度作成すれば継続して使えます。
ただし、家賃相場の変動や税制の改正、社宅制度の見直しなどに合わせて、内容が実態と合っているかを定期的に確認することが大切です。
実態とずれたまま運用すると、費用負担や課税の面で想定外の問題が生じることがあります。
Q. 社宅規程の書き方に決まったルールはありますか?
A. 社宅規程の書式や様式に、法律で定められた決まりはありません。
就業規則の付随規定として、条文形式で整理するのが一般的です。
ほかの社内規程と体裁をそろえ、対象者・使用料・入退去・禁止事項といった項目ごとに条を分けて書くと、読み手が必要な箇所を探しやすくなります。
厚生労働省のモデル就業規則などを参考に自社の実情に合わせて調整するのもおすすめです。
この記事では、社宅規程に記載すべき項目や借上げ・社有での違い、給与課税を避ける使用料の決め方について解説しました。
社宅規程は、入居資格や費用、入退去のルールを定め、社宅制度を公平でトラブルの少ないものにするための土台です。
とくに従業員から受け取る使用料は、実際の家賃ではなく賃貸料相当額を基準に決めることで、思わぬ税負担を避けられます。
社宅運用の見直しをご検討の際に本記事が参考になれば幸いです。