2026年9月9日
テレワークの普及や事業拠点の再編などを背景に、社有社宅を見直し、売却を検討する企業があります。
社宅に空室が増えたり、建物の老朽化によって維持管理の負担が大きくなったりした場合は、売却も選択肢のひとつです。
一方で、現在の利用状況だけで売却を決めるのではなく、今後の社宅需要や保有を続けた場合のコストなども踏まえ、自社に適した方針を判断する必要があります。
また、入居している従業員がいる場合は、不動産を売却する手続きだけでなく、退去や転居への対応、その後の住まいの確保まで見据えなければなりません。
ここで大切なのは、社有社宅を手放すことと、従業員への住居支援を終えることは別の問題として考えることです。
借り上げ社宅や家具・家電付きマンションなどへ切り替えることで、社有社宅を売却した後も従業員への住居支援を継続できます。
今回は、企業不動産の売却・活用から社員寮・社宅の整備まで支援する「日立プロパティアンドサービス」が、社宅売却の判断基準や進め方、売却後の代替社宅の確保について解説します。
株式会社日立プロパティアンドサービスでは、地価公示や不動産投資家調査などの公的・調査データを踏まえ、企業不動産に関する課題整理や活用検討を支援しています。
企業不動産の売却・取得や遊休不動産の活用、社員寮・社宅の立地や整備をご検討中の企業様は、お気軽にご相談ください。
<このコラムで分かること>
社宅の売却を検討するきっかけになるのは、維持にかかるコストが利用価値に見合っているかどうかです。
ただし、実際に売却するかどうかは、コスト以外の要素も含めて判断します。
利用が減った社宅でも、保有を続ければ固定資産税や建物の維持管理費などの負担は継続します。
現在の利用状況や今後の社宅需要を整理し、保有を続けた場合と売却した場合を比較したうえで、自社に適した方針を判断しましょう。
社宅の売却は、以下のような状況で検討されます。
利用されていない、または十分に活用されていない社宅は、企業が保有する「遊休不動産」にあたる場合があります。
社宅の利用状況に変化が生じたときは、今後も保有する必要があるかを見直すきっかけになります。
遊休不動産が生まれる背景や見直しの考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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社宅として使わなくなったからといって、すぐに売却を決める必要はありません。
現在は利用が少ない不動産でも、将来の事業計画に組み込めたり、賃貸など別の形で活用できたりする場合があります。
売却はこうした選択肢を手放す判断でもあるため、他の活用余地がないかを確認してから検討します。
判断材料の比較項目は以下のとおりです。
| 比較項目 | 保有継続 | 売却 |
|---|---|---|
| 建物の維持管理費 (修繕・設備等) | 継続して必要 | 売却後は不要 |
| 固定資産税 | 継続して発生 | 売却後は不要 |
| 社宅としての利用 | 継続できる | 代替住居が必要 |
| 資産の保有形態 | 不動産として保有 | 現金化できる |
| 運営・入居者対応の業務 | 継続する | 軽減できる |
※売却の項目は、売買契約や引き渡しなどを経て、当該不動産を所有しなくなった後の状態を示しています。
売却すれば、維持管理費や固定資産税といった保有し続けることで生じる負担がなくなります。
一方で社宅として利用できなくなるため、必要に応じて従業員の代替住居を確保しなければなりません。
表で示したコスト面に加えて、今後必要となる社宅の戸数や事業計画、人員配置も判断材料になります。
社宅の売却には、資産の現金化や保有・管理負担の軽減といったメリットがあります。
一方、従業員が入居している社宅を売却する場合は、一般的な遊休不動産とは異なる点にも注意が必要です。
売却によって得られるメリットと、社宅ならではの注意点をそれぞれ確認しておきましょう。
社宅を売却する主なメリットは、以下のとおりです。
ただし、売却によって得られる効果は、物件の立地や築年数、売却条件などによって異なります。
売却すれば必ず資産効率が高まるとは限らないため、物件ごとの条件を踏まえて判断することが大切です。
社宅の売却でとくに注意したいのが、入居している従業員への対応です。
入居者がいない社宅であれば不動産の取引を中心に進められますが、従業員が暮らす社宅では、売却後の住まいをどうするかという課題も生じます。
入居者がいる社宅を売却する場合は、社宅使用規定や入居契約の内容を確認したうえで、以下の対応を検討しましょう。
このように、入居者がいる社宅の売却では、住まいの確保まで含めた検討が欠かせません。
売却後にどのような形で住居支援を続けられるかは、次章で解説します。
社宅の売却は、現状分析から始まり、査定・方針決定・売却活動を経て、契約・引き渡しへと進みます。
入居している従業員がいる場合は、この流れと並行して、退去時期の調整や代替住居の確保も進める必要があります。
社宅売却の一般的な流れと、それぞれの段階で確認するポイントを押さえておきましょう。
社宅売却を検討してから引き渡すまでの流れは、以下のとおりです。
| 社宅売却の一般的な流れ |
|---|
|
1.現状分析:利用状況・保有コスト・建物状況などを整理 ↓ 2.調査・査定:土地・建物の状態や市場性などを確認 ↓ 3.方針決定:売却・保有・その他の活用方法を検討 ↓ 4.売却活動:売却条件を決め、買主を探す ↓ 5.契約・引き渡し:売買契約を締結して物件を引き渡す |
※入居者がいる場合は、売却方針の検討や売却活動と並行して、退去時期や代替住居の確保についても調整します。実際の手順は、物件の状態や売却条件によって異なります。
とくに入居者がいる社宅では、買主が決まってから転居先を探し始めると、物件の引き渡しと従業員の転居の時期が合わなくなる場合があります。
売却方針を決める段階から住み替えについても検討し、双方のスケジュールを調整しながら進めることが重要です。
社宅の売却価格は、土地や建物の条件に加えて、物件の市場性や売却後の活用のしやすさなど、さまざまな要素によって変わります。
売却価格に影響する主な要素は、以下のとおりです。
同じ規模の社宅でも、立地や建物の状態、買主が取得後に活用できる可能性によって評価は異なります。
売却を検討する際は査定を依頼し、物件の市場性も踏まえて売却価格の目安を確認しましょう。
社宅を売却する際は、売却価格だけでなく、売却によって生じる損益や消費税など、税務・会計上の取り扱いも確認しておく必要があります。
主に確認しておきたいのは、以下の2点です。
法人税法第22条では、資産の譲渡による収益などを含めて、各事業年度の所得を計算する仕組みが定められています。
また、国税庁は、事業者が事業として対価を得て行う取引を消費税の課税対象としたうえで、土地の譲渡を非課税取引としています。
そのため、土地と建物を合わせて売却する場合は、それぞれで消費税の取り扱いが異なる点に注意が必要です。
実際の税額や必要な税務・会計処理は、会社の状況や取引条件によって異なります。
具体的な処理については、税理士などの専門家へ確認しましょう。
〈出典〉 e-Gov法令検索:法人税法 第22条
〈出典〉 国税庁ウェブサイト:「No.6201 非課税となる取引」
社有社宅を売却しても、従業員への住居支援を終える必要はありません。
売却後も、代わりの住まいを確保することで、不動産を自社で保有する形を見直しながら、社宅制度を継続できます。
ここでは、売却後の従業員の住まいを確保する方法について解説します。
借り上げ社宅とは、会社が外部の賃貸物件を借り上げ、社宅として従業員に提供する制度です。
土地や建物を保有する必要がないため、社有社宅を売却した後も社宅制度を継続できる点が特徴です。
借り上げ社宅は、社有社宅のように保有する戸数に左右されないため、人員の増減や拠点の新設などに合わせて、必要な住まいを確保しやすくなります。
自社保有から借り上げ社宅へ切り替えることで、会社は不動産の保有や維持管理に伴う負担を軽減しながら、従業員への住居支援を継続できます。
ただし、借り上げでは賃料や契約管理などの費用が新たに生じるため、所有していたときとは負担の性質が変わります。
借り上げ社宅の仕組みや税務上の扱いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
〈関連コラム〉
借り上げ社宅とは|住宅手当や社有社宅との違いとメリット・デメリット、税務をわかりやすく解説
売却後の住まいとして、家具・家電や食事付きの物件を活用する方法もあります。
家具・家電が備え付けられた物件であれば、入居時に生活用品を一からそろえる負担を抑えられます。
食事付きの物件では、住まいだけでなく、日々の食生活まで含めた住居支援が可能です。
こうした物件は、複数戸をまとめて借りることもできます。
一度に複数の従業員の住まいが必要な場合、必要な戸数や入居時期に合わせて手配できるため、社有社宅からの移行もスムーズに進められます。
家具付きの借り上げ社宅を導入する際の考え方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
〈関連コラム〉
借上げ社宅に家具は必要?家具付き借上げ社宅のメリット・デメリットと企業の導入ポイント
株式会社日立プロパティアンドサービスでは、家具・家電・食事付きの法人向けマンションや社員寮を以下のページで紹介しています。
社宅売却を円滑に進めるには、不動産の売却だけを切り離して考えるのではなく、事業計画や人員配置、売却後の住居支援までを一連の計画として検討することが大切です。
ここからは、社宅売却を企業不動産の出口戦略として考える際のポイントを解説します。
出口戦略として考える際は、次の項目を一連の計画として整理します。
これらは、それぞれを切り離して決められるものではありません。
たとえば、売却時期を決める際は、従業員の転居時期や物件の引き渡し条件との調整が必要です。
今後の社宅需要について見通しを立てれば、売却後に確保する代替社宅の戸数も検討しやすくなります。
社宅を売却するか、別の方法で活用するかを検討する際は、公的・調査データも判断材料のひとつになります。
代表的なものが、国土交通省の「地価公示」や、日本不動産研究所の「不動産投資家調査」です。
地価公示では、全国に設定された標準地の毎年1月1日時点の正常な価格が示されており、土地取引の指標などとして活用されています。
不動産投資家調査では、投資家が見込む利回りや投資意欲などを把握できます。
これらは、地価の動向や不動産投資市場の状況を把握する際の参考になります。
ただし、公的・調査データだけで個々の社宅の売却時期を判断できるわけではありません。
物件の立地や築年数、建物の状態などの個別条件に加え、自社の事業計画や今後の人員配置も踏まえて、売却・保有・活用の方針を検討しましょう。
〈出典〉 国土交通省ウェブサイト:「地価公示」
〈出典〉 日本不動産研究所ウェブサイト:公表資料「不動産投資家調査」
社宅の売却と売却後の住まいを別々に検討する場合、それぞれの相談先との情報共有やスケジュール調整が必要です。
企業不動産の売却・活用から社員寮・社宅の確保まで一貫して相談することで、物件の売却時期と従業員の転居、代替社宅を確保する時期をまとめて調整しやすくなります。
入居者がいる社宅では、こうした時期の調整が特に重要になるため、窓口をひとつにまとめておく効果は大きくなります。
社有社宅の保有負担を見直す際は、不動産の売却だけでなく、その後の住居支援まで含めて相談先を選びましょう。
株式会社日立プロパティアンドサービスでは、地価公示や不動産投資家調査などの公的・調査データを踏まえ、企業不動産に関する課題整理や活用検討を支援しています。
企業不動産の売却・取得や遊休不動産の活用、社員寮・社宅の立地や整備をご検討中の企業様は、お気軽にご相談ください。
社宅の売却を検討する際に、よく寄せられる質問に回答します。
A. 古い社宅であっても、一律に解体してから売却したほうがよいとは限りません。
どちらが適しているかは、建物や土地の状況によって変わります。
判断材料となる主な点は、以下のとおりです。
たとえば、建物をそのまま活用したい買主がいれば、現況のまま売却できる場合があります。
一方、老朽化が進んで活用が難しい建物では、更地にすることで買主を見つけやすくなる場合もあります。
そのため、築年数や解体費だけで判断せず、建物の活用可能性や土地の市場性、買主の需要などを踏まえ、現況売却と解体後の売却を比較することが大切です。
A. 社宅の売却にかかる期間は、物件の状態や立地、売却条件などによって異なるため、一律には示せません。
ただし、どの段階に時間がかかりやすいかを押さえておくと、見通しを立てやすくなります。
期間を左右しやすいのは、主に以下の3点です。
このうち、売却活動と入居者への対応は並行して進められるため、早い段階から住み替えの検討を始めておくと、全体の期間を短縮しやすくなります。
今回は、社宅売却を検討するタイミングや判断基準、売却の進め方について解説してきました。
社宅は、空室の増加や老朽化だけを理由に売却を決めるのではなく、保有継続と売却を比較し、今後の事業計画や人員配置も踏まえて判断することが重要です。
社有社宅を売却しても、借り上げ社宅や家具・家電付きマンションなどへ切り替えることで、従業員への住居支援を継続できます。
不動産の売却と代替社宅の確保を一体で検討し、保有負担を見直しながら自社に合った住居支援を続けるための参考になれば幸いです。
株式会社日立プロパティアンドサービスでは、地価公示や不動産投資家調査などの公的・調査データを踏まえ、企業不動産に関する課題整理や活用検討を支援しています。
企業不動産の売却・取得や遊休不動産の活用、社員寮・社宅の立地や整備をご検討中の企業様は、お気軽にご相談ください